重防食塗装

重防食塗装とは、主に金属やコンクリートなどの耐食性を高め長期間の使用に耐えるようにするための塗装です。主な用途としては、橋梁・高速道路の部材や構造物などがあり、長期にわたって雨・風・雪・紫外線、場所によっては薬品などにさらされ続けるものに対し、耐腐食性・耐候性・耐摩耗性・耐薬品性など用途に合った重防食の塗料を選定し塗装する必要性があります。また防食下地・下塗り・中塗り・上塗りと工程があり、それぞれに役割が違います。

鋼材の表面に一番最初に塗るのが防錆下地(一字防錆)で、腐食から素地を守る亜鉛末が大量に含まれた無機ジンクリッチペイントもしくは有機ジンクリッチペイントを施工します。これにより素地が錆びる前に亜鉛が錆びることで素地を守り、このことを犠牲防食と言います。次に下塗りは、犠牲防食の層を水や酸素から守る為に、それらに強いエポキシ樹脂がよく使われます。中塗りは、この下塗りの層と上塗りの層をしっかりと密着させるための役割です。最後に上塗りですが、一番表面に出てくるため、紫外線に強い耐候性があり、また美観を高めるため調色性のあるポリウレタン樹脂やフッ素樹脂塗料が多く使われます。

重防食塗装を施工するには下地処理も大切で、鋼材にはミルスケールや錆などが付いていて、それらをしっかりと除去してやらないと塗装剥離の原因になったりするので、ショットブラストなどがよく利用されます。特に無機ジンクリッチペイントを施工する場合は、第一種ケレン(ブラスト処理)が必要になります。

焼付塗装

焼付塗装とは、溶剤塗装と粉体塗装両方に使われる方法で、それぞれ専用の焼付塗料を使用し乾燥炉で100℃~200℃で熱を加え塗料を硬化させ、その後冷えることで金属と完全に固定されます。そのため、専用の乾燥炉が必要であったり専用の機械が必要であったりと初期費用にかなりコストがかかります。その分メリットも大きく、乾燥時間が早く大量の物量を短納期で行う事が出来たり、塗料を焼き付けることで塗膜の硬度が高く耐久性に優れ、艶も出るため美観も優れています。

焼付塗装の可能な素材

鉄・アルミ・ステン・真鍮・亜鉛大キャスト・アルミダイキャスト

焼付塗装出来ない素材

ABS樹脂・ナイロン・ポリカーボネート・塩化ビニル・カーボン等

塗料の種類

メラミン樹脂塗料 

焼付塗装の中で最も使われている塗料がこのメラミン樹脂塗料です。このメラミン樹脂は有機化合物のメラミンを主な素材としホルムアルデヒド等と結合した樹脂塗料で、金属製品に多く使われており、塗膜を比較的厚くすることが出来る為、光沢や艶のある高級感のある美観に仕上がります。また比較的ほかの塗料と比べると安価なのが特徴ですが、紫外線に弱く長期間さらされていると白化するという特徴も持っています。そのため、屋外で使用するものには不向きで、ロッカーやスチール棚等の屋内で使用するものに多く使われています。

アクリル樹脂塗料

このアクリル樹脂塗料も、焼付塗装の中では多く使われており金属製品に対応しています。この塗料は、対候性や耐食性が高く、外部環境に強い事が特徴で、看板や建築資材、工業製品や屋内外の金属製品と幅広く使われています。ただメラミン樹脂塗料より若干コストがかかることと、膜厚がつきづらいという特徴もあります。

フッ素樹脂塗料

フッ素樹脂塗料はフッ素と炭素が組み合わさって出来た塗料です。フッ素樹脂は紫外線や雨の影響を受けにくい優れた耐候性をもっている為、屋外で使用するものや長期の耐久性を求められる場面に適しています。また色々な化学物質に対する耐性があり、酸、アルカリ、溶剤などの薬品に対しても優れた耐久性があります。その他にも、フッ素樹脂は滑らかな表面を形成し粘着性が低い為、汚れや付着物がつきにくかったり、耐摩耗性・美観にも優れている為、メンテナンスのしにくい高層ビルやドームや駅などで多く使われています。ただし、高性能なだけにコスト面では他の塗料に比べ高くなります。

エポキシ樹脂塗料

エポキシ樹脂塗料は、プライマーとして下塗りで非常によく使われている塗料です。塗膜と素材の密着性が非常に高く接着材として、また酸素や水の透過性が低く防錆力もあり錆止めとして使われたり、硬度が高く耐摩耗性にも優れ、油や薬品にも強い耐薬品性も兼ね備えています。ただし対候性が低く、色や艶にも制限がある為、主に下塗りで使われます。

焼付塗装のメリット・デメリット

焼付塗装のメリット

  • 耐久性が高い: 高温で焼付けることにより、塗膜が素材としっかりと密着し、塗装表面が硬く仕上がるため傷や摩耗に強くなります
  • 乾燥速度が速い:短い時間での焼付による強制乾燥をした後、粗熱が冷めれば梱包・積込みが出来る為、短納期に対応が可能になる
  • 美観がいい:塗装方法によって塗膜を均一に保つことが出来、美しい仕上りにすることが出来る。
  • 環境への配慮:低VOC(揮発性有機化合物)の塗料を使用できるため、環境への影響が比較的少ない 

焼付塗装のデメリット

  • コストがかかる:焼き付ける為の専用の道具・設備が必要になる。特に大型の設備になると高額の導入費用や加熱する為のガス代などの費用が発生します。
  • 素材が制限される:金属などには適していますが、プラスチック等高温に耐えられない素材には適していません

弊社の工場では、180℃まで対応できる大型乾燥炉コンベアライン(高さ3.5m・長さ11m・はば3.5m)の設備があり、大量ロットのものから大型の1点ものまで対応可能です。また専門知識を持った職人もいますので、鉄・アルミ・ステンレス等の素材や形状・納期等に対してどの塗料で塗るのが適しているのか等、分からない点がありましたら一度ご相談いただけたら提案させて頂きます。

大型車輌塗装

トラックや特装車といったタンクローリー・ミキサー車・ゴミ収集車など様々な「働く車」、観光バスやマイクロバス、油圧ショベルやホイールローダー等の建設機械を塗装します。トラックの場合は、運転席のある部分をキャブ、後ろの荷物を積む部分をボデー、車軸の着いた下廻りをシャシといい、塗装の仕方や使う塗料もそれぞれに使い分けをします。

ではなぜ大型車両に塗装が必要なのか。塗装の役割を大きく3点に分けてみました。

1、外観を綺麗に、オリジナリティを出したりお客様のニーズに合わせる事が出来る。

塗装の色には数えきれないほどの種類があります。同じ赤でも濃い薄い、明るい暗いなど様々です。また2色や3色に塗り分けたり、メタリックやパール・ラメ等を使用したりすることで、オリジナリティを出す事が出来るので、会社でテーマカラーを作って全車を統一し見栄えよくする事が出来ます。また運搬物の温度を上げにくくする為、遮熱塗装を施工する等お客さまのニーズに合わせた仕上りにすることが出来ます。

2、傷や汚れ、錆から車体を守る。

塗装には経年劣化があります。車両の多くは鋼材で作られており、作業・保管場所や使用頻度によって差はありますが傷・汚れや錆などが発生しそのまま放置していると使い物にならなくなることもあります。その為、劣化が進んでくると再度塗装を施し車体を守り長く乗れるようにします。また新車時でも、海岸線や雪道をよく走る車輌には防錆塗装をすることで、錆の発生を抑制したりもします。

3、企業やお客様のブランドイメージを表現することで、プロモーション・広告の手段になる。

車体に企業のイメージカラーを塗装したり、社名やロゴなどを塗装することで、トラックやバスを見た人に印象を残し、求人や広告宣伝効果を得ることが出来ます。

当社の強み

大型車両は建設機械を除き、最大で高さ3,800mm・全長12,000mm・全幅2,500mmもの大きさになります。トレーラーでは連結時には16,500mmにもなります。弊社工場の設備では、このサイズの車両が入る塗装ブースが3部屋あり、その3部屋を使いこなすだけの技術を持った職人も在籍しており、ありとあらゆる大型車両の塗装のノウハウもありますので、短納期による工程、色やデザインの相談から中古車の塗替え依頼まで対応できるようにしています。

大型車両に使われる塗料

自動車メーカーでは近年水性塗料が使用されていますが、町の板金・塗装屋さんではまだまだ環境配慮型の1液もしくは2液型のウレタン塗料が主流です。さて大型車両ではどうでしょう。現在主に使われている塗料は、環境配慮型の揮発性有機化合物の少ない、環境にも人体にも優しい2液型のウレタン塗料です。水性塗料はまだ大型車両を塗るには、乾燥にかかる時間や塗料のコスト高など課題がありほとんど使われていないのが現状です。